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虚損病後の弁証論治

病因病理:論治  5/5


ご本人から送られてきた問診表は、非常にあっさりとしたものでした。

過重労働から胃痛が生じ、その結果骨髄移植という手段で生命を受けついてこら れた方にとって、いまのこの状態は非常に健康なのだというイメージが強いのだ ろうと思われます。

それではと、お体を拝見すると、腹診で特徴的なように、非常に肝の相火が張り、 おなかが突っ張っています。また気海から関元、大巨が抜けた上に臍下も盛り上 がり、下焦の明瞭な抜けの上に、肝欝の状態がきつく現れたおなかになっていま す。つまり弱い土台の上に、頑張りたいという意志の力が強く張ったという状態 をそのままお腹があらわしていると考えられます。

また、経穴診をしていて非常に特徴的だったのは、右の合谷あたりを中心として 感じられる、ピリピリ感です。これをどう評価するかは難しいところですが、肝 欝が非常にきついということは言えるでしょう。肝欝がきついというとこは、左 右の太衝、神門の状態からもうなづけるところです。肝欝がもしかしたら、熱ま で生じているのではという可能性も、百会の熱、口の渇きなどから感じさせられ ます。これは、この方の身体の緊張感が非常に強く、ぴりぴりとし、その上、そ れが熱まで生じているということです。

列缺から内関の陥凹は気虚の表れかと思います。舌の色褪胖嫩歯痕、肺兪の軽い 発汗など、気虚の状態がかなり続いていることをしめしています。

脾気(胃腸の力)の問題は、食事などに問題がないのにもかかわらず、季肋部の 軽い湿痰、経穴の状態の悪さ、便通の問題などがあります。これは、脾気そのものが弱いとい うよりも、肝欝から起こされた脾虚である可能性も考えられますが、どちらの問 題が中心であるかは、時間をおってみるべきでしょう。ただし、強い肝欝があり ますので、それを取りはらうこというとが脾気を救う可能性を強く感じさせると いうことではあります。これは簡単に説明するとストレス(自分が生じさせてい る身体への緊張感もストレスと表現しています)状態が、胃腸の機能を弱くさせ ている可能性があるのではないかということです。

腎気の問題は、腹部での明瞭な抜け、背部の三焦兪、腎兪の抜けで明瞭です。 腎気というのは、身体を支える土台の力、臍下丹田の力です。

お体を拝見すると、腎気(身体の土台の力)の明瞭な抜けは否定することができ ません。その上に、肝気(やる気、意志の力、緊張感)がピリピリと立ち上がり、 脾気(胃腸の力)を押さえているのではないかという可能性まで感じさせる身体です。







ご本人とお話していて感じるのは、非常にやる気のある、前向きな女性であると いうことです。意欲的で、沢山の可能性に目を輝かせていらっしゃいます。

それはとても、とても素敵なことだと思います。生命があり、生きている。その 身体をつかって、生命を楽しむことが許されているということは、私などが説明するより も、もっとよく実感として感じられている方だろうと思います。

ただ、そのやる気、意志の力の使い方は、少し無理があるように思います。

私たちの身体は、大地に根を張るしっかりとした土台(腎気)の上に、やる気、 意志の力(肝気)を立たせ、生きていくものだと私は理解しています。

ときとして、このやる気は、自分自身への刃ともなります。胃腸の力を押さえつ けたり(いまその可能性は高いですね)、土台の力(腎気の器)を直接的に弱ら せたりします。このことは大変大きな問題です。

前回の骨髄移植まで致った経緯は、まさに、このような状態。身体が非常に弱っ ていたのに、やらなくてはという意志の力で頑張り続けてしまったので、身体が 壊れてしまったのです。

それほどまでに、この方の『意志の力』は強いものです。ですから、この力の使 い方は非常に慎重にと呼びかけずにはおれません。非常に切れ味の鋭いナイフで す。ご自身の体力を無視して暴走することがありませんよう、切に思うのです。







ご自身が、ぜひ目を向けて欲しいのは、ご自身の土台を養い、生命の喜びを楽し みながら人生を送っていただくことです。この方向で、ご自身の意志の力を発揮 できることがきっとあると思います。

ひとつの方向にだけ目を向けているとなかなか見出すことができがたいとは思い ます。いま、自分に許されている出会いを丁寧に点検して、発見していただきた いと思います。きっとすぐそばにあるのではと私は思うのです。







まず、いまの器がそれほど万全ではないという自覚はお持ちください。 そしてやる気、意志の力(肝気)がかなり土台の力(腎気)や、胃腸の力(脾気) を弱めている可能性が強いということも考えておくべきでしょう。

土台(腎気)を養うということを中心にし、そしてその上で、土台の大きさに応 じたやる気を発揮することが大切です。

たぶん、この方にとって、分に応じたやる気で生きるということは、かなり難し い修行になるかもしれません(=^_^;=)。でも、自分の分に応じて生きるというこ とは、この方だけではなく、誰にでも科された課題です。

土台(腎気)を養うというのは、臍下丹田の力を養うということです。 ゆっくり歩くこと、丹田を意識して、呼吸をすること。よく眠ること、 楽しんで食べること。それらが丹田の力の養いに通じると思います。

主訴の骨髄移植後とまった生理をくるようにということに関しては、腎虚が明瞭 ですので、腎気をあげることはひとつの答えにはなると思います。

ただし、生理がとまっているという状況が、かなり特殊な状況下で起きています ので、通常の場合でおこりうる生理がこないということとは、少し意味合いや問 題の深さが違う可能性も考えられます。年齢的な問題もありますので、ぜひ、主 治医と相談され、ホルモン療法などのことを視野に入れてみるべきかとも思いま す。








主訴 1/5

問診 2/5

切診 3/5

五臓の弁別 4/5

病因病理:論治 5/5






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