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患者さんへの提言

産後アトピーの弁証論治
病因病理:弁証論治
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本症例の患者さんは、3歳から発症した喘息が12歳で治まり、14歳の生理がきたころから、アトピーが発症、入退院を繰り返すという状態を継続し、27歳のときのある地方病院での入院、食事の改善などで、かなりの状態好転という経過をとっています。

成長にともない、器が大きくなり脾気がたち、喘息はおさまるものの、生理がく ることで、女性としての腎気と肝気の波に対応しきれずアトピー発症という状態 になっているように考えられます。

(少し説明がやっかいなので、省きましたが、生理がくるということは、ある程 度の範囲で、腎気がおっこちたり充実したり、肝気が脹ったり落ちたりをするも のだと思います。それが器が小さいために、腎気の虧損は大きくなり、肝気の張 りは大きくなりで、生理的な範囲で受け止められずに、もともとの脾気の問題も あり、アトピーの発症ということをみたのではないかと推測しています)






地方病院での、食事制限や、入院、生活指導は非常にこの方によい影響を及ぼし ました。赤黒かった肌が普通の色になる。夜眠れるようになる、ストレス疲れを 感じないということは、一定の腎気の回復、脾気の回復、肝気の収まりをしめし ているものだと思います。

その後、胃痛などはあるものの、結婚、妊娠、出産に無事致っており、アトピー もそれなりの落ち着きで経過しています。

しかしながら、産後2ヶ月で、出産後44キロあった体重が42キロに低下、ア トピーも悪化。その後、体重は、10月に37キロまで低下の一途をたどってい ます。

このとき同時に出てきたのが、右アゴの痺れ、腰痛、口渇(腰痛、口渇は以前か らありますから、より悪化ということでしょう)、異常食欲、からだのだるさ、 入眠困難、眠りが浅い、多夢などです。






出産以前の生理の状況をみると、生理前に辛く、乳房痛などもあり、肝気の張り、 支える土台の腎気のなさがうかがえます。また生理が不規則不安定で40日ぐら いの周期ということも腎気の弱さを示しています。そのうえで、色が濃く、赤黒っ ぽく多目ということで、お血の存在をおもわせます。この方のアトピーはこの生 理の発症と同時です。つまり素体として、腎虚肝欝、お血が考えられます。

地方病院での入院が食事をかえることで脾気の回復を中心にはかり、器が回復し たことで、腎気も回復、肝気もゆるむということで、全身状態の回復をみたのだ と思われます。その後、胃痛はあるものの、無事に妊娠、出産といたれたのも、 この器の回復が大きく影響しているのではないかと思われます。

しかしながら、出産という大きな腎気の虚損にであい、体重の明らかな減少とい う器の虚損をみています。同時に発症してきた、腰痛は腎気の虚損、右アゴの痺 れは胃経の虚損、口渇、異常食欲、入眠困難、眠いが浅い、多夢などは、内熱の 悪化を思わせます。つまり、腎気の大きな虚損が、脾気の低下をもまねき、体重 の減少、胃の経絡の虚損をおこし、母乳をどんどん出すといことから、陰液の不 足に傾きがちになったために、器の小ささとあわせ、肝陰の虚損から陰虚陽亢で 胃熱がでたために異常食欲、心熱がでたために不眠多夢口渇なども発症してきて しまったということでしょう。

それでも、3月から十全大補湯を1日1回ながら飲む、鍼灸を月に1、2度なが らおこなうことで、なんとか一息つきながら経過しています。






ところが、夏という腎気の落ち、器の虚損を持ちがちな時期に、旅行にいったり、 お出かけをしたりと、生活の乱れがあったため、9月より便秘と下痢を繰り返す というよりいっそうの脾気の低下をまねき、10月には体重も37キロと妊娠前 よりも9キロも少なく、顔もげっそりするという、かなり厳しい状態の脾腎両虚、 器の虚損という状態になっています。

この方は、『ストレスを解消しないと・・・』と仰り、旅行や、お出かけなどを 生活にいれようとなさってしまいます。ストレスの解消というのは、脾腎の器が あった場合は、肝気を発散させることで、身体の欝滞・気欝がとれて気分がよくなる のもわかります。しかしながら、脾腎の器がないのに、ストレスの解消だと、肝 気を発散させると、腎気を虚損させることになり、より器が小さくなります。つ まり、ストレスの解消で、自分の生気をどんどん外に捨てることになってしまい、 より虚損が深くなって入ってしまうという、悪循環になっているのです。ストレ スを発散させていると思ったら、自分の生命力を漏らしてしまっているというこ とになってしまっているのです。

もともと、肝気がたちやすくストレスを感じやすいタイプの方なのだと思います。 しかし、現在はそれを受け止める土台がまったくないという状況だと思います。 ご自身の思うストレスの解消は、体重が妊娠前の44キロまでに回復するまでは、 じっと我慢で器を作ることが大事でしょう。

中心の課題は、腎気をたてること。このために、脾気を健やかにし、肝気の無駄 なたちを押さえることが大事です。腎気が一定量たってくれば、自然と内熱もあ る程度のおさまりをみせてくると思います。このまま内熱をすすめてしまうと、 心ー脾の関係、心ー腎の関係が大きく乖離し納まりがたい重大な問題へとも発展 しかねない状態です。妊娠前までの回復をまず一番の目標にして、からだを大事 にしていただきたいと思います。母乳がよくでていらっしゃいますので、きっと 手入れも効くと思います。がんばりましょう。






弁証 腎虚を中心とした脾腎両虚
論治 脾気をたて、腎気を固める。








主訴:問診 1/6

時系列の問診 2/6

切診 3/6

五臓の弁別 4/6

病因病理:論治 5/6

患者さんへの提言 6/6






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