【訳者私見】
脉状の滑沈小、弦急分け方は、邪気の強弱を指しているのではないかと思われま
す。
湿熱として考えなさいといことで、この病を邪実であると把えていることがわかり
ます。下痢をしているときに、その脉状が、沈滑小の生気の虚した状態を現すもの
であるということは、邪実が外に出ていると考え、治ると考えているようですね。
そして逆に、邪気が外に出ているにもかかわらず、脉状から邪実の強さが抜けない
と思われるとき(弦急)、患者の身体のなかで行われている正邪の闘争は邪気が生
気に対して勝っていると考え予後不良としているのではないかと、思われます。
そのように、邪実が中心の問題であると把えているのにもかかわらず、まず邪実の
排出という瀉法を中心にとらず、脾腎の気を徹底的に灸で建て、浅い鍼で少し気を
動かして、排出を促すという治療法をとっています。これが本郷正豊らしいやり方
のひとつだなあと私は思います。
きっと治療の順番もこの通りで、補って補って補ってそして軽く瀉してやる。こん
な感じなのかなと私は想像しています。