【訳者私見】
消渇というと、現代ではすぐに糖尿病をあてはめて考えがちです。しかしなが
ら、ここで語られている消渇は、かわきのやまいということに代表されるように、
消渇は消渇で、現代で語られる糖尿病とイコールではありません。
現代で語られる糖尿病の範疇に、ここで語られる消渇に似た病態をしめすものあ
り、そういったものに関しては、その糖尿病に関しては消渇の糖尿病であると語っ
ていいと私は思います。しかし逆に、消渇ではない糖尿病の病態もたくさんあるわ
けで、一概に病名の合体がなされることに対して、私は疑問をもっています。
さて、鍼灸重宝記本文に戻りましょう(^^)
消渇の病を、上消では肺熱による乾き、中消では胃熱による脾陰虚による乾き、
下消では腎陰虚による熱による渇きとみています。つまり、消渇の病を陰虚内熱に
よる渇きの病と考えているようですね。
灸で、腎兪の他、骨盤上の経穴を多く多用しています。これは特徴的で面白いで
すね。また鍼でも、同じ中膂(月兪)をつかっています。滋陰するときにこのあたり
を使うという経験方でしょうか?
水溝、承漿、金津玉液など口のまわりの経穴をつかっています。これはもしかし
て、非常に水を欲しがるので、この部分を鍼することで熱を瀉してやろうという発
想があるのかもしれませんね。金津玉液は、これを出血させることにより、心胃の
熱を退かせ、津を生じて渇を止めるという効能が期待される経穴ですね。
また、太衝、行間、労宮、商丘、然谷、隠白など末端穴がたくさんあげられてい
ます。これらは熱を泄らすという発想で、それぞれ病態にあわせ、つかわれていた
のかなあなどと思います。