現時点での左肩峰付近の局所の痛みだけを考えれば、瘀血とみることが出来ます。しかしながら、生命力が損なわれた後に出ている瘀血ですので、
直接的に邪を払うことは、難しいのではないかと考えます。
また、肩の関節は瘀血と思われるような痛みですが、他の関節はそこまで
の痛みというよりも、重だるい痛みの上、関節が変形し機能障害を起こしていま
す。形ちが変わるということは、その局所が気血によって充分に養われていない事
をしめしているのではないか
と思われます。
現時点では、湿の影響をうけやすく、内湿の存在を思わせます。しかしながら、
脾胃の状態は、便通食事などをみても、割合としっかりし続けていることがわかり
ます。このことは、脾気自体が衰えたためによる湿痰ではなく、肝気鬱結により気
機の疏通がなされなかったための、湿痰の生成ではないかと思われます。
本症例の第一に必要なことは、腎気をたてることだと思われます。腎気の支えを、
精神的なストレスから、閉経から、年齢の衰えから失ったことにより、症状が悪化
していっています。まず腎気を高めることがポイントかと思われます。
次に並行しておこないたいのが、肝気鬱結状態の緩和です。肝気の暢びやかなる疏
通が、生命力を高めるためにも必須だと思われます。
痺証の場合、風寒湿の外邪の存在が重要です。本症例の場合、痛みが移動するこ
と、湿に弱いことなど、現時点での、内風、内湿は考えられますが、経過が長く、
思い当たる外邪との闘争がないことより、本症例では、直接的に外邪の事を考える
よりも、裏をたてることにより、内湿、内風を取り除いていくと考えています。
証:腎虚、肝気鬱結。
治則:疏肝理気、益気補腎
☆その後の経過1☆