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本症例の患者さんの主訴は、不妊症ということですが、頭痛という症状が、この 患者さんの状態を読み解く上で重要な鍵となると考えられます。まず頭痛の分析 からはじめていきましょう。
弁病のところで、外感によるもの、肝欝によるもの、（気血両）虚によるもの 可能性が考えられています。
頭痛の状態でくくっていくと
側頭部を中心にガンガンする感じ
午後３時ごろから疲労感、だるさが出て頭痛が増強
肩こりからくるときは朝から
生理前に発生が多いー他の時の発生も多い
痛い場所は前と横が多く、たまに後ろが痛い
側頭部を中心にガンガンする感じというのが、この方が頭痛の特徴的な状態 としてお話なさっている症状です。側頭部がという部位より肝胆の経絡に近いと いうこと、そしてガンガンという表現から、虚によるものではなく、実タイプの頭痛ではないのかと考えられます。
また、風邪を引いた時という自覚があるときも、後頭部ではなく、左、前、右の部位が痛いと仰っ ています。風邪による頭痛や凝りは、通常、膀胱経の気が阻滞し後頭部が痛くな ることが多いのに、この方の場合は、違います。これは、素体として、肝胆の欝 気の停滞による頭痛をおこしがちでな方であると考えられると思います。
夕方から疲労感、だるさがでて頭痛が増強ということは、気虚や腎虚など虚 が絡んでくることにより、頭痛がひどくなっているということをしめしています。
つまり、この状態は、肝気鬱結タイプの頭痛が中心であるけれども、それに虚 が絡んでいるのかと考えられます。
生理の状態は、肝気鬱結を思わせるものです。生理前、初期の刺痛、鈍痛、イ ライラ、乳房の状態などそれを示していますね。そして時々遅れ、年に２，３ 回は周期が６０日程度になる（つまり一回飛んでしまう）ということは、ここに も虚が絡んでいる可能性があることを示しています。
生理が順暢にあるということは、衝任脉、そして肝、腎と深い関係があります。
腎気があふれ、血海と呼ばれる衝脉に注ぎ込まれ、その源である子宮を滋潤しま す。脾胃も直接的に衝脉を濡養してゆきます。その上、肝の蔵血作用がスムーズ にあることにより、順調な生理となるのです。
生理が飛んでしまうということは、衝脉の虚、腎気の虚そして肝血の虚の可能性 が考えられます。
脾胃の状態の虚をしめす、足三里、太白の状態は脾胃の弱さを示しています。ただ、脾胃その ものは食事を中心とした問診をみても、現時点では問題はないと思います。衝任 脉を充分に濡養するには不足なのかといったことを匂わす程度なのかとも考えら れます。
午後にだるくなってくる、疲れるなどは腎気の弱さを感じさせるものです。
このあたりの、脾胃の多少の弱さ、腎気の弱さが、生理の不順さをよび、不妊と つながり、またしっかりとした肝腎の土台のなさが、肝陽の暴走を呼び、虚の絡 んだ肝欝頭痛とつながっているのではないかと考察されます。
生理をおこすということは、女性の身体にとって、頑張って肝気をはり（その ために生理前などに肝欝の症状がでることがあります）その後、生理がくるとい うことになります。この頑張って肝気を張るときに必要なのが、踏み台と為る腎 気です。肝腎同源といわれますが、肝気が暢びやかにはるためには、充実した腎 気、肝陰が必要であるという言葉だと思います。
本症例の女性の場合、踏み台である肝陰腎気がしっかりしていないので、肝気 が暢びやかに張れず、強い肝陽の亢進と為り頭痛となっています。そして貧弱な 踏み台である腎、肝血の不足は、生理の遅れ、飛ぶこと、午後になって、疲れる、 頭痛が増すということとつながります。
肝欝は、また腎気を食みます。ここで腎気と肝気の悪循環がおこり、 強い肝欝と腎気の弱りという虚実挟雑となっていくのです。本症例でも、実にか らんで虚がおこってくるのは、こういう状態であると考えられます。そしてこの 悪循環が、不妊という事態も引き起こしている可能性が考えられます。
弁証：肝気鬱結、腎虚
論治：疏肝理気、益気補腎
肝気を払うことで、頭痛などの状態を軽くしていきます。またそのこと自体が 腎気の養いの手助けにもなります。
また、直接的にも、下焦の虚を救い、赤ちゃんと早く出会うためにも、腎気を たて益気補腎していきます。
.....不妊・頭痛弁証論治のはじめに戻ります........
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