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不定愁訴の弁証論治




論治 6/6


本症例の場合、時系列で、身体を状態を詳にしていくことと、生理を中 心としたリズムに対して、身体がどう反応しているのかということを考えていく ことが、全体を解き明かしていくときの、大きなポイントだと思います。







10代後半より、生理を中心として半分は水や軟便、あとの半月は少し固いとい う状態が始まっています。

これは、生理が終わって、肝気が収まり素体としての脾腎の状態が現れやすいと きには、水や軟便となり、排卵期から生理が始まろうとする時期になると肝気が たかぶって固い便になってくるという、本症例の患者さん特有の身体の動きとなっ ています。







20代前半、半ばでも、数回の入院があり、骨盤腹膜炎や膵炎などをおこして います。腹部に炎症性疾患を持ちやすいという印象があります。また、疲れると 朝、顔がパンパンするのなど、脾腎の気の弱さを感じさせる印象もあります。

29歳の抗がん剤を使っての炎症性疾患の治療により、体重が39キロまで落 ち込み、不眠のトラブルが出現、生理時に腹部の腫脹がおこる、むくみのトラブルがひどくなるということがあります。これは、体重が39キロまでに落ちるような全身の生命力の 低下により、腎気を大きく損傷したため、肝気が収まり所を失い不眠の強い症状 につながったのではと思われます。また、むくみのトラブルもこの時期、本格化 していくことより、脾腎の気と、肝気との兼ね合いがバランスをとりにくくなっ ていることがうかがえます。







現時点で、問題になってくるのは、肝、脾、腎が中心であろうと思います

この相互の問題は、本症例の場合、非常に複雑です。

脾気、腎気の弱りも明瞭です。しかしながら、生理を中心とした身体の反応 の流れ、腫脹の状態をみていくと、脾気、腎気そのものが前面に出るよりも、肝気 の状態が本症例の患者さんの、身体に及ぼす影響の中心になっていることが、わかり ます。

イライラすることがあり、肝気がぎゅっとたってしまうと、強い不眠になって しまう。実際に食べればおいしいのに、食欲がわかない、生理時期のむくみなど、 どれほどこの方の肝気が全身へ影響をあらわしているのかが、わかるでしょ う。

女性の身体特有のリズムとして肝気がたっている時期に、本症例の患者さんは、 むくみという形ちで、全身への影響を及ぼします。肝気がたつため、脾気が低下し、腎 気にも影響をあたえ、むくみという現象へとつながるのでしょう。しかしながら、 鍼で即効性をもって、むくみがとれるということを考えると、むくみ自体は、 脾虚や腎虚などの臓腑からの問題が直接的ではなく、肝欝による影響が直接的に は中心となっている段階にあると考えられるので、むくみ自体の問題としては、 まだ”軽い”とは思います。

しかしながら、29歳のときの強い治療により、むくみが出る時期が長くなっ ていることなどを考えると、生命力の虚損(腎気の衰え)も、出始めていること は否定できないでしょう。

腎の根が衰えているということは、29歳から出ている不眠が非常に強くなっ ていること、睡眠の状態が悪い、疲れやすいということ、また、そのころ体重が 極端に落ちていることからも考えられます。そしてこのことは、いまだ回復がな されていません。

肝気がたつときに、腎気の土台がしっかりしていれば、肝気は暴走することな く、のびのびと生きる意思、生命の喜びをあらわすものでしょう。一般的にいう、 やる気も、こののびのびとした肝気であると思います。旺盛なる肝気をお持ちで あれば、より欲しいところの腎気の土台が、崩れ始めているというのは、非常に 問題であると思います。







脾気の問題は、水様の下痢、便の出切らない感じ、湿痰の問題などを考えても、 深刻な状態であるとは思いますが、食べると食欲がでて美味しくたべられること などをみると、器そのものが壊れているとは思えません。まず肝気を払って、横 逆してくる状態をとりのぞき、脾気を健やかにしてあげることが必要ではないか と思います。すなわち、脾気そのものを立てるよりも先に、肝気を払うことの方 が大切であると私は考えます。







旺盛なる肝気。これは、その方の生きる様そのものでありましょう。 そしてこの肝気が、人間を支え、前向きに生きていく原動力でもあるのだと思い ます。

本症例の患者さんは、非常に強い肝気をお持ちです。きちんといろいろな事を計 画的に実行力をもってこなす様、そして自分に対する律しかたを伺っても、きも ちよいほどの印象です。また、肝気は生命力の勢いでもあるのでしょう。インター フェロンを使った炎症性の疾患でも、非常に生命力の器自体を虚損させるような 状態になりつつも見事に完治されるなど、この方の肝気の剛さをまざまざと見る 思いです。

そしてこの方の肝気は、この方の身体自身の全てをも支配しています。肝気が高 ぶれば脾腎の気は抑えられ、肝気の高ぶり中心の身体になってしまいます。不眠、 むくみ、便の状態、食欲などなど、すべてに影響が出ています。

肝気には、支えが必要です。健やかに上に伸びていこうとする枝である肝気は、 どっかりと大地にしっかりとおろされた根が必要なのです。

本症冷の患者さんの場合、20代までは、なんとか(といっても、かなり肝気に よっていじめられていますが)肝気と支えである脾腎のバランスはとれていたの でしょう。しかしながら、20代後半での大病により、脾腎の器が非常に小さく なってしまいました。

本来であれば、この小さくなった脾腎の器にあわせて、肝気も控えめにするべき であるのでしょう。

しかし、肝気は暴走しています。

小さくなってしまった脾腎の器を、バンバンと扣いて、無理をさせ、押さえつけ て肝気が立っています。

暴走する肝気は脾腎を食みます。器が小さくなっている脾腎が、暴走する肝気に よって、より壊れていくのです。身体の悲鳴が聞こえるようです。このあたりが、 限界ではないでしょうか。







バランスをとるというとき、なにと、なにのバランスであるのかということを考 えなければなりません。本症例の場合は、暴走する肝気と、小さな器の脾腎のバ ランスです。

まず、ファーストチョイスで、暴走する肝気を払うということをするべきでしょ う。肝気が鬱熱をもつと、炎症性の疾患を復び起こしてくる(それもこのあとは、 全身性のものの可能性が高いでしょう)可能性も高くなります。また、脾腎の器 も食むことになります。肝気を暴走させない。これがこの方の場合の、緊急的な ファーストチョイスとなっていくのではないかと思われます。

そして、バランスをとるもう一方の脾腎の器。脾気の虚損も、便通の状態、湿痰 の状態などを考えるとかなり深いのではないかと推測できます。しかしながら、 いま、この時点で考えるのならば、まず腎気の器を救うことでしょう。

むくみ、不眠の原因でもありますし、また肝気が暴走する大きな原因として、腎 気の虚損があげられるからです。肝気はしっかりとした腎気の土台があれば、暴 走せず、のびやかに色艶をみせてその人の人生を彩るものなのです。腎気の土台 がない状態で、肝気がたつと、暴走して上焦を灼いたり、腎気そのものを食んだ りするのです。土台を養うことが大切です。







弁証:肝気鬱結 脾腎両虚
   疏肝理気、益気補腎。




.....不定愁訴の弁証論治のはじめに戻ります........






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